前回まで、農地の話をしました。今回から、減反政策についての問題にクローズアップしたいと思います。

まず、皆さんは「減反」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか。

実りの田畑

減反政策

国によるコメの生産調整、いわゆる「減反」。ウィキペディアによると、下記のように説明されています。少し引用します。

減反政策(げんたんせいさく)とは、戦後の日本における、米の生産調整を行うための農業政策である。 基本的には米の生産を抑制するための政策であり、具体的な方法として、米作農家に作付面積の削減を要求する。そのため「減反」の名が付いた。一方、緊急輸入を必要とする米不足や、事故米なども発生している。 2018年(平成30年)には、この制度は廃止となる。
減反政策 – Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/減反政策

簡単にまとめると、米の価格安定のためにお米の生産そのものを調整した政策です。1971年に始まり、国が生産数量の上限を決め、自治体を通じて生産者に配分していました。この調整値に協力すると、国から10アールあたりの補助金がもらえた政策です。

減反政策の今

そう。「もらえた」政策です。2017年を最後に、この政府(国)の減反政策は終わっており、2018年からは実質的な国による政策は無くなります。

繰り返しますが、政府(国)による生産調整(減反)が廃止されて無くなるのです。

実は、都道府県レベルで独自にコメの生産計画を作ることを認めています。

あれ? 国から都道府県に主管が異動しただけ???

表現の仕方一つかもしれませんが、国が主導する「減反」が廃止され、都道府県(地域)で生産調整していく方式に切り替わる、と読み替えられるかもしれません。

減反政策後のお米の供給バランス

農林水産省より、2018年2月に発表された「お米に関するマンスリーレポート」を見てみましょう。

平成30年産米の生産量は、平成31年6月末民間在庫量が安定供給を確保できる水準(180万トン)となるものとして、735万トンと設定。(735万トンは平成29年産米の生産数量目標と同水準)
出典:お米に関するマンスリーレポート(平成30年2月号)

平成30年産は国の生産調整(減反)が廃止とはいえ、まだまだ完全自由でいきなり供給が跳ね上がる予測ではなさそうですね。平成30年産では減反廃止に伴う混乱はないと、今の段階では言えそうですね。

減反の問題は米の価格形成に影響

いつものとおり、減反政策の何が問題か、という根本から整理したいと思います。

なぜ減反を進めなければならなかったのか。

減反のはじまりと歩み

戦後、アメリカ産の余剰小麦が原料のパンが、日本では学校給食がパンに限定されるなどの対応がされました。その結果、日本全体の食生活の洋風化が進み、米の需要が減少することに至っています。

需要が減り供給が過剰になれば当然値段は下がります。値段が下がれば生産者は撤退します。これは何もお米に限った話ではありません。市場原理です。

1942年 食糧管理法成立

1942年にコメの生産から流通まですべてを政府が統制する「食糧管理法成立」が成立しました。ちなみに、この法令制度は、ほとんどの食料品が政府の直接透過になっています。その後、1952年以降、米のみがただ一つの統制対象になりました。その後、1960年には食糧管理会計の赤字が深刻な問題になりました。

1961年 農業基本法成立

1960年産米から採択され 1995年まで採用される生産者米価の算定方式として、農業に関する政策の目標を示すために1961年に制定された法律「農業基本法」が成立します。
米作に要した肥料代・農薬代・機械償却費など農家の生産費と、都市勤労者(製造工業)の平均賃金で稲作労働を評価した金額を加算され、農家の賃金を都市労働者並みの賃金を補償するものでした。

稲作の生産性と無関係に生産者米価が上昇しすぎたため、 1970年頃から米価が問題視されるようになりました。

1971年 ~ 1975年 転作奨励金

減反の始まりです。米は需要と供給のギャップから生産過剰となり、1971年から本格的な生産調整(減反)に踏み切りました。「農家の自主的な取組み」として麦類・豆・牧草・果実などを作付けをすると、農家には転作奨励金(休耕奨励金)が支給されました。

これが、日本の農業、農村、農政を大きく変えるきっかけになりました。

1995年 食糧管理法が廃止

国内農業市場の開放、国内農産物への政府補助金削減など、国内の米の自由化するために食糧管理法が廃止されました。

1999年 食料・農業・農村基本法

1999年に「食料・農業・農村基本法」(新農業基本法)が制定されました。主旨は次の通りです。

  • 米の計画生産で需給調整と価格の安定をめざす。
  • 麦・大豆・飼料作物など転作作物栽培の本作化、水田を利用した多角経営を進める。
  • 稲作経営安定化対策により、減反協力農家には、販売した自主流通米が安値の場合に政府が損失補償をする。
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    さて、この減反政策の間、日本の農地はどうなってしまったでしょうか。

     
     
     
    減反というのは単純に見えて実際は複雑です。また、様々な議論がされていて、一概に何が正しいのかを判断することは難しい内容だと思っています。

    上にも述べましたが、市場原理から判断すれば、生産量が増えれば価格は減少し、価格が減少すれば生産者は撤退します。撤退すれば自然と生産量は落ちます。すると、また価格が上昇します。

    しかし、米を生産する農地は、一度放棄すると、元のお米をつくるまでにその土地そのものを作り直さなければなりません。

     
     
    これが、休耕田・耕作放棄地の問題です。ここについては、また別でお話ししたいと思います。

     
     

    農業に限った話ではなく、製造業やサービス業など他の産業においても問題がないわけではないのはお分かりのことかと思います。しかし、なぜここでは農業の問題を取り上げるのか。

    農業は人が生命活動を行う上で最も必要不可欠な食料を生産する産業であるというところにあります。ただ、勘違いしてほしくはないのですが、あくまで食料という生産物に対する産業としての農業の問題を取り上げるのであって、農業という産業の特性を取り上げるのではないことを先にお伝えしたいと思います。

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