日本の農林漁業は、持続可能性において多くの課題を抱えています。
ベルディアでもその問題を取り上げてきました。
そのような中、農林漁業の再活性化、そして成長分野として農林水産業の6次産業化が注目されるようになりました。
農業再生という点でいえば、農業の現場が農産物の付加価値をつけるためにさまざまな加工を行い、自らの手で流通させ消費者にまでつなげていくことにあります。そうすれば農業再生が見えてくる、と言う理念が「6次産業化」です。
消費者に届けるということ
農業から少し離れた話をします。
消費者としては、「安くて」「便利」なモノやサービスを望むことは当然です。
その結果、「安くて」「便利」なモノやサービスばかりを望んでいては生産者側が十分な収益を得られません。従業員つまり消費者の賃金も上げられずに、結果、消費者は消費を抑え、安いモノに走るということにつながります。
流通とは、生産された商品が消費者に届くまでの道すじ(流れ)のことです。
生産者 → 卸売業(者) → 小売業(者) → 消費者
という流れが一般的です。
消費者は潜在的な意識として三つのレベルに分けることができます。
消費者にモノやサービスを届けると言う意味では、どの意識レベルにおいても「届ける」ことは可能です。
しかし、それで本当に良いのでしょうか。
「サービスをしてもらう」という労働に対する対価を払わないことは、自分が働いても対価をもらえないことと同じだというごく当たり前のことに思いを馳せてもいいのではないでしょうか。
一般的に経済活動を資本主義的に行う場合において、賃金が上がらない状況下では消費を抑えようと心理が働きます。こうして、価格の下落、売上・収益の減少、賃金の抑制、消費の低迷、価格の下落といった悪循環が続いていくことになります。
農家にとっての流通
話を農業に戻します。
皆さんの中には、スーパーでお野菜を購入されている方が多くいらっしゃると思います。あなた(もしくはあなたのご家庭)にとって、お野菜は高いですか?安いですか?
日本での農産物流通である系統出荷は、生産者が農協(JA)に出荷するところから始まります。そして卸売市場の卸・仲卸を経て小売店に並ぶという形態をたどっています。生産・流通・加工・配送の分業がなされていて、それぞれの業者間で評価基準が異なるために、流通過程で多くの農産物が価値のないという判定を受け廃棄される現状にあります。
つまり、生産者が思ったより安く買い取られ、結果としてスーパーで安く売られているのが実情です。
もし、あなたが農家さんだったとすれば、どうですか?労働に対する対価を払わないということを、直で経験するわけです。
それくらい、農家さんにとっての流通とは厳しいものがあります。
「6次産業化」は流通の革命になるか?
さて、これまで何度もご説明を繰り返してきましたが、6次産業化とは、第1次産業、第2次産業、第3次産業を、1×2×3=6次産業とする考え方で、農業者が農畜産物の「生産」だけでなく、「加工」、「流通・販売」まで手がけることで付加価値を高め、農業者の所得増大、農村の活性化に結び付けようという考え方です。
平成23年に「6次産業化法」(略称)が施行され、国を挙げた法整備をはじめとする支援体制が組まれています。
そうした中で、農家さんにとっての流通は変化は訪れるのでしょうか。
餅は餅屋
「6次産業化」に転換する農家さんに待ち受けるライバルはだれでしょう?
そうです。すでに長い年月をかけて事業展開されてきた食品加工や流通販売しているプロの2・3次産業事業者です。これらの企業は専業でやっているわけですから、そのノウハウはもちろんのこと既存マーケットに対する経験が違います。
これらの事業者を相手に、ついこの前まで1次産業しかやってこなかった農家さんがいきなり挑戦状をたたきつけるわけです。
結果はどうでしょう。
日本の諺に、「餅は餅屋」というものがあります。
何事においても、それぞれの専門家にまかせるのが一番良いということのたとえですね。 また、上手とは言え素人では専門家にかなわないということのたとえです。
前回の記事でも述べましたが、事業戦略としてのマーケティング戦略を明確に定めたうえで臨まなければ、大変な苦労が予想されるのが世間の大半の見方です。
とはいえ、このまま1次産業のままでは先細りしているのが現実としてあるわけです。
今、日本の農家は大きな岐路に立っていると言えるのかも、しれませんね。
農作物を使ってスイーツやジュースなど、作ってみたいものをイメージしてみましょう。自分自身が心から熱意を注げる商品をイメージするのです。
そして、最初のうちは、すべてを自分でやろうと考えてはいけません。まずは、人の力も頼りながら、小さくスタートするのが基本です。
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