今回は、農地についてお話したいと思います。

前回は農業という産業の特殊性の中で、農地、すなわち農業を営む上での土地の重要性について説明しました。今回お話しする農地の話をする上で理解が必要となる前段情報として、いまから農業経済の話を少しばかりします。

農業経済の主体はどこにあるか

農業という産業を支えているのは、実は農家ではありません。もう少し付け加えるのなら、農業という産業経済活動を行っているのは、農家ではなく農業を経営ないし事業として携わる「農業経営体」が産業経済活動を支えています。

一緒じゃないの? って思っている方。実は違うんです。2005年より、「農業経営体」を次の通りに定めました。

2005年農林業センサス(平成17年)から、従来の農家・林家の調査単位に加え、経営に着目した農林業経営体の調査単位で把握したため、「農業経営体」と「農家」を単位とする統計があることから、両者の概念を示します。

【農業経営体】
次のいずれかに該当する事業を行う者。
(1)経営耕地面積が30a以上の規模の農業
(2)農作物の作付面積又は栽培面積、家畜の飼養頭羽数、その他の事業の規模が次の外形基準以上の農業
1.露地野菜作付面積 15a 2.施設野菜栽培面積 350㎡ 3.果樹栽培面積 10a 4.露地花き栽培面積 10a 5.施設花き栽培面積 250㎡ 6.搾乳牛飼養頭数 1頭 7.肥育牛飼養頭数 1頭 8.豚飼養頭数 15頭 9.採卵鶏飼養羽数 150羽 10.ブロイラー年間出荷羽数 1,000羽 11.その他 調査期日前1年間における農産物の総販売額50万円に相当する事業の規模
【農家】
経営耕地面積が10a以上又は経営耕地面積が10a未満であっても過去1年間の農産物販売金額が15万円以上あった世帯。
【販売農家】
経営耕地面積が30a以上又は過去1年間の農産物販売金額50万円以上の農家。
【自給的農家】
経営耕地面積が30a未満で、かつ、過去1年間の農産物販売金額が50万円未満の農家。
【土地持ち非農家】
農家以外で耕地及び耕作放棄地を合わせて5a以上所有している世帯。

なお、30a(アール)っていう広さのイメージですが、1a≒100㎡とみて、平均的なコンビニの敷地面積が100㎡と言われていますので、コンビニ30軒分ですね。(ちなみに、10a≒1反ですので、30aは約3反です。)

現在の統計で農林水産省の発表によると、農家や法人組織等を合わせた農業経営体数は一貫して減少傾向で推移しています。平成27(2015)年においては、農業経営体数は137万7千経営体となり、そのうち家族経営体数は134万4千経営体、組織経営体数は3万3千経営体となりました。

農業経営体の推移

農家は基本的に家族経営といえども農業経営を独立して会計管理し事業体として自立しており、また、法人化した農業経営や一般企業お農地貸借による参入も増えてきています。従って、農業経営の基礎は従来どおりに家族経営ですが、経済活動は農家ではなく経営体として支えられていることになるのです。
 
そして、この日本の農業経営体の特徴が今現在の農業問題、とりわけ、農地の問題を大きくしているというのです。その特徴とは。

農業経営は零細規模だが決して貧しいわけではない農業者が大層を占めています。

販売金額の規模別農業経営体

このことが、農業政策ひいては農地問題へと発展させることとなり、元凶なのです。

なぜなら、小規模農業を営む経営体にとって、小規模優遇政策がベストとなり政策の改革ではなく現状維持の政策が望まれるわけです。改革により大規模経営体への移行を推進されれば農地の集約が高まりますが、それを望んでいないのです。

その功罪の一つの例が、農業者戸別所得補償制度と言われているのです。

農業者戸別所得補償制度(のうぎょうしゃこべつしょとくほしょうせいど)とは、日本の民主党が提案した農業政策である。2007年10月に参議院に法案を提出し11月に可決、2008年5月に衆議院で廃案となった後、2009年8月30日に行われた第45回衆議院議員総選挙のマニフェストに盛り込まれた。民主党への政権交代により、2011年(平成23年)から実施する予定であったが、一部は2010年(平成22年)から先行導入された。
農業者戸別所得補償制度 – Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/農業者戸別所得補償制度

この政策により、多くの小規模農業経営体である農家が個別所得補償加入で農地を貸し出す誘因がなくなり、大規模農業経営体へ移行するほど耕作地の集約ができなかったのです。

農地はだれのものかという問題

繰り返しの話となりますが、農業においては、土地(農地)が極めて重要です。しかも、機械設備などと違い他へ移動させることもできません。

では、その農地はだれのものかということです。

もちろん、土地の所有者のものであることはふつうに考えればわかることなのですが、農業という産業における土地、農地についてはそのように考えてはならない場面もあるのです。

農地は農業生産に欠かすことのできない生産要素です。土地を農地とし効率的かつ生産的に利用されることによってはじめて土地としての価値があるのです。少し強い表現をすれば、農地としてその土地を利用するのであれば、なにも農家である必要はなく、極論、農地の所有ではなく農地の利用は誰でもいいのです。

この農地に関する話はもう少し話が長くなりそうです。
次回に「農地はだれのものか」についてより詳細をお伝えできればと思います。

 

農業に限った話ではなく、製造業やサービス業など他の産業においても問題がないわけではないのはお分かりのことかと思います。しかし、なぜここでは農業の問題を取り上げるのか。

農業は人が生命活動を行う上で最も必要不可欠な食料を生産する産業であるというところにあります。ただ、勘違いしてほしくはないのですが、あくまで食料という生産物に対する産業としての農業の問題を取り上げるのであって、農業という産業の特性を取り上げるのではないことを先にお伝えしたいと思います。

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