今回も前回に引き続き、農地についてお話したいと思います。
前回の話のおさらいですが、農地は農業生産に欠かすことのできない生産要素であり、農地としてその土地を利用するのであれば農家である必要はないのではないか、という話を展開しました。
少し強引な論調ですが、食料確保の観点から資源(農地)を最大限に有効利用するという産業という観点からみれば、あながち強引とは言えない側面があります。
では、本当に農地を利用するのは農家である必要が法的になくなった場合、何が起きるか想像できますか?
・土地の奪い合い?
・大地主の誕生?
・小作人制度が復活?
他にも様々な観点があると思います。が、もっと話を大きくしてみましょう。
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農地
えっ? 文字が大きくなっただけですって?
あ、それは大変失礼しました。まじめな話をします。
農業政策にもっとも大きな影響を及ぼす農地という存在
農家以外の人たち(※法人含む)の農地利用が法的に問題なくなった場合、一番影響が出てくるのは、実は農業政策なのです。
前回の記事で話に挙げた「農業者戸別所得補償制度」の話を覚えていますか?
この政策により、多くの小規模農業経営体である農家が個別所得補償加入で農地を貸し出す誘因がなくなり、大規模農業経営体へ移行するほど耕作地の集約ができなかった、という話なのですが。
農業者戸別所得補償制度 – Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/農業者戸別所得補償制度
この話と農地問題と農業政策と何が関係するかを説明します。
・・・、の前に。皆さんは、農家のかたの年収がどの程度かをご存知ですか?
農林水産省の農業経営統計調査によると、農家の年収は次のようになっています。
・平均年収:456万円
・農外所得:146万円
・農業での粗利:501万円
・農業経営費:382万円
ちなみに比較として平成26年度の国税庁「民間給与実態統計調査」、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」を参考にしたいと思います。
・総合商社業界:1,200万円超え
・銀行業界:640万円超え
・情報処理サービス業界:590万円超え
・雑貨業界:430万円超え
・宝石・貴金属業界:380万円超え
農業従事者の場合、経営体という考え方のため、一概に民間給与系(※いわゆるサラリーマン年収)との単純な比較はできません。経費の関係などもありますのでね。
どうでしょう。
農家の方全般に言える話ではないですが、農業経営の経費を差し引いた年収ベースでは低所得者に分類されるとは思います。そして、経営体としては零細規模ですね。
ただ、一般のサラリーマンとは決定的に違う点が一つだけあるのです。
その決定的に違う点とは、充足はしませんが、ある一定レベルで食料を自給自足できるという点です。
つまり、所得として低所得者に該当はしますが、一般企業に勤めるサラリーマンに比べた場合に一定レベルで食べることに困らない状況にあるわけです。
実は、ここの部分が農業政策を歪ませていると言っても過言ではないところなのです。
農地。それは農業政策のゆがみの元凶
先に述べた通り、農家、農業経営体の経営状況としては、零細ではありますが、決して貧しいとは言えない農業従事者が多くを占めています。
この小規模農業経営体の存在が農業政策のゆがみの元凶と言えるです。
どこが元凶かと言いますと、、、
もし、小規模農業経営体が農政の関係で大規模経営体に集約したとしましょう。
すると、小規模農業経営体はその職を離れことを意味します。つまり、離農・退出、です。
この小規模農業経営体の減少が意味することは、農業協同組合(JA農協)の組合員数の減少です。
JA農協にとって組合員数の減少は取扱高(≒売上高)の減額に直結します。つまち、JA農協の存亡そのもの死活問題です。
つぎに、JA農協の組合員がそこから離脱することは、農林族議員と呼ばれるような農家の票田を持った議員は、次回以降の選挙での票を失うことを意味します。つまり、組合員の離脱は議員落選の可能性が浮上するわけです。
そしてさらに、JA農協の組合員が離脱することで小規模農業経営体への補助金が減額となります。補助金の減額は、農林水産省の予算の減額です。つまり、農林水産省にとっては省益が減るという構図です。
農地を大規模農業経営体へ集約
↓
小規模農業経営体が離農
↓
JA農協の組合員数の減少
↓
JA農協の存亡問題
農地を大規模農業経営体へ集約
↓
小規模農業経営体が離農
↓
農家の票田の減少
↓
農林族議員の議員落選の可能性
農地を大規模農業経営体へ集約
↓
小規模農業経営体が離農
↓
補助金の減額
↓
農林水産省の予算の減額
↓
農林水産省の省益減
どうでしょうか。農地は農業という産業ではなくてはならない存在ゆえに、農政をゆがめる元凶という現実がありました。
この農地に関する話はもう少し話が長くなりそうです。
次回も引き続き「農地はだれのものか」についてより詳細をお伝えできればと思います。
農業に限った話ではなく、製造業やサービス業など他の産業においても問題がないわけではないのはお分かりのことかと思います。しかし、なぜここでは農業の問題を取り上げるのか。
農業は人が生命活動を行う上で最も必要不可欠な食料を生産する産業であるというところにあります。ただ、勘違いしてほしくはないのですが、あくまで食料という生産物に対する産業としての農業の問題を取り上げるのであって、農業という産業の特性を取り上げるのではないことを先にお伝えしたいと思います。
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