前回に引き続き、減反政策がもたらした影響をまとめてお話ししたいと思います。
減反政策を簡単におさらいします。
農耕機械の発達により農作業効率が飛躍的に向上しました。そのため、値崩れが起きそうになるぐらい米がとれるようになったというわけです。政府は主食である米生産農家を保護するため、耕作する田んぼを減らして米の価値を維持しようとしたわけです。
そして、米から大豆などへの転作をした農家にその補償として奨励金を支給しました。
その奨励金は何度かの名称変更が行われて、現在もまだ続いています。「農業者戸別所得補償制度」と聞くと何となく知っている方もいらっしゃると思います。この保証制度については2つの記事ですでにふれておりまして、こちらとこちらの記事にございますので、お時間ありましたら参照願います。
優良農地から一転。耕作放棄地の問題点
直ちに耕作できる農地で、耕作の意思もある農家が何らかの理由で耕作していない耕作放棄地は、放棄しているわけではないので、「休耕地」として扱われます。また、耕作はされていても、利用の程度が著しく周辺より劣っている「遊休農地」というものがあります。
耕作放棄地では雑草や害虫が増え、いくら自分の農地を適切に管理していても、近くにある耕作放棄地から無制限に雑草の種や害虫が飛散して周辺の農地に影響をもたらします。
農林水産省のHPおよび発表している「耕作放棄地の現状について」から見てみましょう。
農業地域類型別に耕作放棄地面積率をみてみますと、山間農業地域が最も高く14%近くまで占めています。
耕作放棄地の復活には
原野化した耕作放棄地は、農地への復元が難しいのは当然のことです。多額の補助金で圃場された優良農地、この補助金は、つまるところ私たちの税金から賄われています。
それが耕作放棄地となる原因には様々ありますが、結局のところ、我々消費者が農業という産業をきちんと下支えしきれていないことが、巡り巡っているのではないでしょうか。
現在、生産している稲田や畑は先祖代々手間をかけて出来たものです。それを放置するわけです。まず耕作を放棄すると草だらけになります。そして、放置年月が長ければ長いほど背の高い草が伸びます。そして低灌木が自生します。そうなると、それらを撤去するためには重機が必要になります。
これは、農林水産省が発表している耕作放棄地対策事例集から「荒廃農地の再生利用に向けた取組主体別事例 」を抜粋したものです。
・典型的な都市近郊農業地帯であり、農地を相続しても耕作しない者が多く、耕作放棄地の増加が深刻化した。
・耕作放棄地を自己所有機械やリース機械により復旧。復旧後、堆肥を投与し、1年間以上は牧草(緑肥)の植栽により土壌改良を図り、2年目から小松菜の大規模露地栽培を実施している。
・当集落のほとんどが 2 種兼業農家で個別経営を行っていること、農作業従事者の高齢化や後継者不足による労働力不足、農道の狭隘、傾斜地等の作業条件の悪さにより、耕作放棄地が増えている。
・中山間地域等直接支払制度をきっかけに平成 12 年度に策定した「集落協定」をもとに耕作放棄地の刈り払い、耕起が定着した。2 年目にモデル構造推進指導事業(県単)のモデル集落の指定を受け、平成 14 年度から共同取組活動の一環として、協定地域内の耕作放棄地を活用したトウモロコシの共同栽培を試みた。
この2つともに言えることですが、畑として収穫できるようになるまでに2年を費やしています。もちろん、2年間のそこには収入などありません。しかも、まだ水田として復活したわけではありません。
畑と違い、水田は非常に肥沃である必要があります。耕作が放棄されることで、それを取り戻すためのお金と時間がものすごくかかるということを、政府は理解した上で、減反を進めたのでしょうか?
疑問が残るところです。
減反というのは単純に見えて実際は複雑です。また、様々な議論がされていて、一概に何が正しいのかを判断することは難しい内容だと思っています。
米を生産する農地は、一度放棄すると、元のお米をつくるまでにその土地そのものを作り直さなければなりません。
次回では、減反政策が招いた休耕地以外の問題点について話をまとめたいと思います。
農業に限った話ではなく、製造業やサービス業など他の産業においても問題がないわけではないのはお分かりのことかと思います。しかし、なぜここでは農業の問題を取り上げるのか。
農業は人が生命活動を行う上で最も必要不可欠な食料を生産する産業であるというところにあります。ただ、勘違いしてほしくはないのですが、あくまで食料という生産物に対する産業としての農業の問題を取り上げるのであって、農業という産業の特性を取り上げるのではないことを先にお伝えしたいと思います。
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