前回は、植物工場の基本的な構造について説明しました。今回は植物工場の最も重要な装置、照明(光源)に関するお話しをしたいと思います。
一般社団法人日本施設園芸協会が行った実態調査によると、太陽光型は 126 箇所、人工光型は 197 箇所、太陽光・人工光併用型は 31箇所でした。
人工光型において経年で増加傾向にあり、併用型において横ばい傾向です。人工光型植物工場は、初期導入投資額(いわゆるイニシャルコスト)が約3億と非常に高額になります。それでも増加傾向にあるというのは大変うれしい状況であると捉えられ反面、考え方によってはそこまででもしないと我々の日々の食料を賄いきれいないという危惧もあるわけです。
人工光型植物工場の照明(光源)は、分類すると蛍光灯型、LED型の2種類があります。中でも、LEDを光源とした植物工場の場合は、1.消費電力、2.波長調整、3.熱放射の低減、4.ランプの長寿命、5、パルス照射可能、の5つの特性があり、蛍光灯型からLED型に切り替える工場も出てきているほどです。
少し専門的な話:LEDの光の違い
専門的な話ですが、野菜、というより植物は光合成をすることで成長します。ま、当たり前の話なんですけどね。実はこの光合成、光合成色素のクロロフィルaとクロロフィルbが赤色と青色の光を取り込むことにより行われます。
つまり、植物、つまり野菜の生長に必要なのは、赤色と青色の光が必要になるわけです。
赤色と青色のLEDだけで栽培すれば、どうなると思いますか?植物が吸収しない(≒光合成に必要としない)光を浴びないで植物を成長させるわけです。そうすれば、電気エネルギー(※電力)に無駄がなく、かつ効率よく生育させることができるわけです。
ただし、赤色と青色の波長以外の光がまったくもって不要、というわけではありません。ある企業の調査によると、育苗過程における生育促進効果を高めるには特定波長成分を増加させた単色光での実験で、効果が得られたという結果も出ています。そのため、近年では、光の影響も考慮して波長調整可能なLEDも開発を進められています。
少し専門的な話:高演色白色LED
白色LEDは白色電球にかわる期待がされているもっとも技術進歩の著しいLEDといっても過言ではありません。その中でも「高演色白色LED」と呼ばれる、青色LEDに赤色蛍光体と緑色蛍光体を調整して太陽光に似せた光を出す白色LEDはその代表です。
このLEDの素晴らしい特筆すべき点は、先の説明に記載したとおり植物が生育で必要とする赤色と青色の光を出すだけではなく、植物工場内で作業する人にも良い影響をもたらす点です。
このLEDは数種類の波長スペクトルがありますが、作業する人間の作業効率向上、ディスプレイ効果を両立する設計のもと開発されたLEDなのです。
波長分析をしますと、人間の目の感度が最大となるといわれる相対放射強度の波長である555nm、直物の光受容体に吸収されやすいとされる450nm、660nm、730nmの比率で含まれる波長分布となっているのです。
LED光源の弱点
1.消費電力、2.波長調整、3.熱放射の低減、4.ランプの長寿命、5、パルス照射可能、の5つの特性があるとされるLED光源ですが、もちろん、弱点もあります。
その弱点は「硫化」だと言われています。
ここでいう「硫化」を簡単に説明すると硫黄と化学反応することで黒ずみを発生させることです。
空気中の硫黄ガスはLED内部に浸透し内部の銀ミラーをゆっくりと黒化します。黒化すると反射率が低下しLEDの照射率が低下します。すると、十分な光が照射されず植物の生育に遅れが生じてしまうわけです。つまり、「硫化」によりLEDの劣化が発生しうるのです。
本章では、植物工場の成り立ちから運営に必要な基礎知識や技術、活用する際の課題といった実用面までをまとめていきたいと思います。どうぞ、参考にしていただければと思います。
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