前回は植物工場のはじまりを説明しました。今回は、植物工場の基本的な構造について説明したいと思います。

 植物工場の中

前回の記事で世界で初めて植物工場を開発したのはデンマークであること、また、それからのあゆみについて説明したとおりですが、その植物工場そのものの中がどのような構造となっているのかを説明します。

皆さん、どのようなイメージを持たれいますか?まあ、言葉の通りでいいと思います。植物を製造するための工場、です。

水や人工光といった環境設備を制御する装置、土壌のかわりとなる栽培装置、温度センサーに代表される各種のセンサー装置、そして遠隔で操作するための集中遠隔操作ルーム、まさに自動車製造工場のような装置とセンサーだらけのイメージそのまま、、、、、というのに限りなく近くても過言ではありません。とくに、人工光型の場合は外の太陽光を遮断するわけですし、外からの虫や病原菌の侵入を防ぐために二重扉やエアーシャワーといったような設備まで完備される工場もあります。

栽培室においては、外気の影響を受けないためにも断熱性の素材で外壁を覆います。人工光を反射させていかに効率よく光をあてるかを考えられて白色の反射板を用いることもあります。太陽光を利用する工場の場合、通年安定生産のためには太陽の熱線の影響を考慮するために特殊フィルムをガラスに張り付ける構造を採用している工場もあります。また、夏の日中時間が長い場合はその太陽の角度に応じて栽培棚を移動させる場合もあります。

想像以上に、かなり工業化・機械化されていることがお分かりになるかと思います。

 水耕栽培

水耕栽培と聞くと、どのようなイメージをされますか?実はこの水耕栽培、土壌を使わずほぼ無菌に近いきれいな水に、植物にとって理想とされるバランスの肥料を溶かし込み、植物を育てています。

例えば、いちご狩りに行かれたことのある方はイメージしやすいかもしれません。大人の腰から肩にかけてくらいまでの高さの棚(※作業の効率性を重視した高さに調整されている)に、土の代わりに肥料などの栄養分を溶かした培養液を使った栽培方法です。

この水耕栽培、最大のメリットに連作障害が発生しないというものがあります。野菜の連作障害とは 毎年、同じ場所に同じ野菜(あるいは同じ科の野菜)を栽培することを連作といいます。そうすると、その野菜を冒す病原菌や有害線虫(ネマトーダ)が多くなったり、土壌の中の養分が不足したりして、野菜の生育が悪くなります。これを連作障害といいます。

連作障害[編集]. 連作に起因する何らかの理由(主として土壌に関係する理由)により、次第に生育不良となっていく現象を、連作障害(れんさくしょうがい)という。
連作 – Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/連作

連作障害はおきないことで生産性を向上させることができる上、クリーンな清潔栽培環境で農薬を使用せず栽培できる水耕栽培。とてもよい栽培方法ですね。

はて、ここで一つ疑問が。

無菌に近い状態の培養液で、かつ、工場内そのものがクリーンであれば害虫予防などの農薬は散布されない。ということは、つまり、水耕栽培ってイコール有機栽培ってことになるの?

 水耕栽培は有機栽培?

答えを先に言うと、ノー です。

現在の規格では水耕栽培された野菜はオーガニック認定されません。

【有機農産物の日本農林規格】

○土壌の性質に由来する農地の生産力を発揮させる:土壌の性質に由来する農地の生産力を発揮させることを生産の原則として定められていることから、水耕栽培及びロックウール栽培の農産物は適用外。また、れき耕栽培わさびにおいても同様。

はじめての人のための有機 JAS 規格 第4条

2013 年4月 農林水産省 消費・安全局 表示・規格課

と、このように、水耕栽培された野菜はオーガニック認定されないのです。土壌の性質に由来する農地の生産力を発揮、という条件があるようですね。

植物工場の中での作業

植物工場での生産現場はどのように生産工程をふむのかを説明します。

まず、播種(はしゅ。種まきのこと)をするのですが、これはプラスチック製の箱にウレタンのブロックを敷き詰めます。そこに種をいれるための十字の切り込みをいれ、そこに播種します。そしてこの箱を1~2週間ほど苗が育つまで育苗棚で育てます。ここでも植物工場のスケールメリットを得られます。

露地栽培の場合、種から収穫までの間、その場所にずっとその野菜が占めてしまうことが多いのですが、植物工場の場合は、育苗までの期間、別の棚で管理できます。しかも、そこまでの高さを必要としないため棚で重ねることが可能です。横に使っていた土地を縦で使えるメリットが出てくるわけです

育苗棚で本葉が展開した段階で育成用パネルに移し替えて培養液で収穫まで育てます。この期間がおよそ3~4週間程度と言われています。この期間中、露地栽培の場合は日照や雨、気温といった天候に左右されて生育が変わってきますが、植物工場では自動制御盤によってコンピューターの自動制御となります。その間、人は別室のコンピューターを定期チェックするのみとなるわけです。

植物工場にかかるコスト

植物工場での一連の作業を説明しましたが、管理費を含めどのくらいのコストがかかるのでしょうか。想像できますか?

LED式光源、土地は300坪(約1000㎡)の場合、イニシャルコスト(※いわゆる建設コスト、初期投資)が3億と言われています。300坪っていう広さのイメージですが、平均的なコンビニの敷地面積が100㎡、30坪と言われていますので、コンビニ10軒分ですね。

そこから変動費となる電力、各種肥料や材料費、人件費、梱包費、管理費、また技術に関するメンテナンスや空調などの費用などのランニングコストがかかるわけです。

さすが、工場と言われるだけあって初期投資額がすごいですね。そこからさらにランニングコストが発生するわけですから、小規模農業を営む個人では二の足を踏むのもうなづけます。

本章では、植物工場の成り立ちから運営に必要な基礎知識や技術、活用する際の課題といった実用面までをまとめていきたいと思います。どうぞ、参考にしていただければと思います。

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