農協という組織は、農業協同組合法(農協法)によって目的を次のように定められています。
「農業者の協同組織の発達を促進することにより、農業生産力の増進及び農業者の経済的社会的地位の向上を図り、もつて国民経済の発展に寄与することを目的とする。」
現在の農協は、もともと農業従事者のために設立された組織です。もう少し付け足すと、終戦直後のGHQによる農地改革によって、農家は自作農となったことで、農家が集まって協同組合を作ったのが農協の始まりとされています。農協の成り立ちの詳しい話は前回の記事をどうぞご覧になってください。
今の農協の問題とは
さて、本命とでも言いますか、日本の農業問題のうち農協が抱える問題について。
「農業生産力の増進」が担えない
農家は農作物を農協に納入します。そして農協は農作物を市場に流通させます。また、農協は農家の金融、保険、共済など、また医療、介護といった福祉・福利厚生の部分をも賄うようになりました。すると、JAは、JAグループとも言われるように、幅広い事業を行う複数の組織で構成されます。
しかし、産業としての農業は衰退の一途をたどっています。農家の離農ですね。
いま日本には約700の地域農協があります。
農協は株式会社ではなく、農業者である正組合員と、JAごとに定めた一定の出資金を払えば組合に加入できる准組合員の2種類の組合員で構成されています。
以前の記事でもお伝えしましたが、現在の統計で農林水産省の発表によると、農家や法人組織等を合わせた農業経営体数は一貫して減少傾向で推移しています。平成27(2015)年においては、農業経営体数は137万7千経営体となり、そのうち家族経営体数は134万4千経営体、組織経営体数は3万3千経営体となりました。
グラフで見ての通り、農業従事者(=組合員)は減少の一途です。
繰り返します。
農協は株式会社ではなく組合員で構成されています。
いま日本には約700の地域農協があります。
そして、
農業従事者(=組合員)は減少の一途です。
農業従事者の減少は、地域農業そして農協が衰退する可能性が高まることを意味します。
すると、
農協は当初の役割である「農業生産力の増進」を担うことができなくなります。
「農業者の経済的社会的地位の向上」が担えない
なぜ農業従事者は離農するのか。
労働環境の厳しさ?
収入の不安定さ?
新規参入障壁?
トラクターやその他農機具への多額の投資?
農業を通しての目標や夢がもてない?
離農する理由なんていうのは、実際のところなんだっていいと思います。離農したという現実がそこにあるというだけで、その理由づけなんていくらでもできます。
農業という産業にくくられることなく、どんなことであっても「良い仕事」をするために努力は必要です。そして、「良い仕事」とは、「お客様に喜んで頂くこと」です。ここに産業の違いはありません。
ですので、どんな仕事であれ「お客様に喜んで頂くための努力」は不可欠です。それが基本です。
離農に話を戻すと、離農する人は何かしらの理由により「お客様に喜んで頂くための努力」をやめた人です。それが咎められるとか、問題があるとか、そういう話ではありません。農業を辞める理由として「お客様に喜んで頂くための努力」をやめたというだけです。そして、離農した人は別の産業に就職して「お客様に喜んで頂くための努力」をされることかと思います。農業から別産業に方向性が変わっただけです。
そして、この農業による「お客様に喜んで頂くための努力」をやめた離農者が増えることは、すなわち、その人が他の産業に移ったということになります。
これは、最終的に農協は当初の役割である「農業者の経済的社会的地位の向上」を担うことができなくなることにつながります。
いかがでしょうか。
農協の目的が失われつつあるという問題を少しでもご理解いただけましたでしょうか。
農協改革という政府の動きもありますが、農協の問題というのは単純に見えて実際は複雑です。農家のための組織だったのに、今となっては肥大化したJAという組織の維持のために存在しているとまで言われています。
様々な議論がされていて、一概に何が正しいのかを判断することは難しい内容だと思っています。
次回では、JAという組織の維持に関する問題点について話をまとめたいと思います。
農業に限った話ではなく、製造業やサービス業など他の産業においても問題がないわけではないのはお分かりのことかと思います。しかし、なぜここでは農業の問題を取り上げるのか。
農業は人が生命活動を行う上で最も必要不可欠な食料を生産する産業であるというところにあります。ただ、勘違いしてほしくはないのですが、あくまで食料という生産物に対する産業としての農業の問題を取り上げるのであって、農業という産業の特性を取り上げるのではないことを先にお伝えしたいと思います。
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