これまで3回にわたって塩分と高血圧に関する内容をまとめました。今回も塩に関する食の安全について話をしたいと思います。

塩と高血圧症には相関関係が無い

塩と高血圧と認知症の関係

塩?ナトリウム?高血圧との関係

前回の最後になりますが、高血圧の原因って塩じゃなくて、ナトリウム、とりわけ、グルタミン酸ナトリウムによる影響によるものが大きいのではないか、という疑問で終えました。

そうです。前回のまとめのとおり、高血圧と塩、という関係よりも、高血圧とナトリウム、の関係の方が各種論文からの読み取りから関係性の強さが見え始めました。

つまり、ナトリウムを本来は問題視しないといけないところを、塩、にフォーカスをあてて、視点をずらしているだけに過ぎないのではないか、という疑問が残ったのです。

そこで、登場したのが、グルタミン酸ナトリウムです。巷では、「うま味調味料」と呼ばれるアレですね。

正確には、L-グルタミン酸ナトリウム ですか。

では、説明を始めます。

化学調味料(うま味調味料)は安全なのか?

何度となく繰り返して発言していますが、食の安全は数値化されて管理されています。私たち一般消費者がイメージする「食の安全」は、実は、心理的な判断による「食の安心」だったということがわかりました。

では、化学調味料(うま味調味料)は安全なのか? という疑問点を安全性について述べます。

結論から先に。

米国食品薬品局では、「3g以上の摂取をしたヒトで、頭痛などの軽い症状を引き起こした例があるが、一食あたりのグルタミン酸ナトリウムの使用量は0.5g以下であり、通常摂取では安全である」という報告をしています。

国立健康・栄養研究所でも、「通常の食事に含まれる量での摂取はおそらく安全と思われる」としています。

ただし、次のような報告もあります。

2002年に弘前大学医学部の研究グループが「高濃度のグルタミン酸ナトリウムが緑内障の原因になる可能性がある」と、動物実験(ラット)の報告を発表しました。

2006年に、米国国立医学図書館と米国国立衛生研究所が運営する健康情報サイト「The Medlineplus Medical Encyclopedia」においてグルタミン酸ナトリウムは「偏頭痛を起こす物質」に指摘されています。

2017年7月に、国立医薬品食品衛生研究所が発表した「食品安全情報(化学物質)No. 15/ 2017」によると、神経発達毒性試験からグルタミン酸ナトリウムのNOAEL 3,200mg/kg が同定できた。パネルは健康ベースのガイドライン値導出のためにヒトデータが使えるかどうか評価した。ヒトでの影響が同定されたものの、無影響量が同定できるような用量-反応データがなく適さないとされた。3,200mg/kg の NOAEL にデフォルトの不確実係数 100 を用いて ADI 30 mg//kg 体重/日を導出した。とあります。

※NOAEL:化学物質の有害性の程度を表す指標の一つ。影響がみられない最大の投与量。
※ADI:一日摂取許容量。生涯にわたり毎日摂取しても影響が出ないと考えられる一日あたりの量。

まあ、なんでもそうですが、過ぎたるは及ばざるが如し、で食べすぎはダメよ、という結論ですかね。

で、この記事でまとめたいのは、そこじゃない。

あくまで、高血圧との関係、です。

 

L-グルタミン酸ナトリウムと高血圧の関係

滋賀県立短期大学の論文を引用します。

実際に問題とされるのは食塩の構成成分であるナトリウム(Na)の過剰摂取であり,これを防ぐためには個々の食品に含まれるNa含量を十分に把握する必要がある

 

加工食品には,調味料あるいは添加物の成分としてグルタミン酸ナトリウム(MSG)など,食塩以外に由来するNaが相当量含まれている可能性がある。

 

加工食品を使用した献立中にNa含量の多いものが目だち,食塩由来のNaだけでなく,MSGなどによる可能性が報告10,11)されている。

10)佐藤文子,白田きち:学校給食のカルシウム,リン,鉄,ナトリウム,カリウム含量について,栄養学雑誌,40,3~10
11)佐藤文子:某地区の単独調理方式(自校方式)と共同調理場方式(センター方式)における学校給食のカルシウム,リン,鉄,ナトリウム,カリウム含量,栄養学雑誌,48,37~43

 
着眼点が、今回の記事とまったく同じです。

滋賀県立短期大学の論文で述べられる結論は最後にご紹介するとして、論文中にあった、グルタミン酸ナトリウム(MSG)について、すこし予備知識を書きます。

グルタミン酸ナトリウムのお話し

「うま味成分」である「グルタミン酸」が発見されたのは1866年のことです。グルタミン酸ナトリウム(MSG)は昆布や煮干し、トマトなどの天然のうまみの成分です。グルタミン酸は、タンパク質を構成するアミノ酸の一種です。

アミノ酸というとたんぱく質の構成物質なのですが、食品添加物としてのアミノ酸というのは、イノシン酸、グルタミン酸などの旨み成分を人工的に作った化学調味料を指します。なお、商品にはグルタミン酸ナトリウムや化学調味料という表記はせずに「調味料(アミノ酸等)」と書かれていることが多いです。

調味料(アミノ酸等)とは、調味料(アミノ酸)にイノシン酸やグアニル酸、コハク酸ニナトリウムや無機塩などを加えた化合物のことです。調味料は、いくつかの種類を併用することが多いですが、基本的にはグルタミン酸の使用量が一番多いため「調味料(アミノ酸等)」といった風に記載されているわけです。

グルタミン酸ナトリウムの製法

グルタミン酸ナトリウムの製法は、味の素のWebサイトによると次のように書いてあります。

サトウキビを絞って煮詰める。
煮詰めた糖蜜に、糖からグルタミン酸を産生する菌を入れる。
十分に発酵させたら乾燥させる。
グルタミン酸ナトリウムの結晶を集める。

この4つの工程で製造されているようです。こちらでは、原料はサトウキビとありますね。うん。サトウキビって書いています。

ただね、サトウキビから造るってことは、様々な不純物が混じっているはずなんですよね。またまた味の素のWebサイトからその商品詳細を確認すると、【グルタミン酸ナトリウム 97.5%】とあります。

純度が高いですね。かなり、高いですね。Webサイトでの製法工程に化学処理の工程が書かれていませんでしたが、本当に化学処理していなのですかね?仮に化学処理工程があったとして、なぜ記載されないのでしょうかね?

疑問が残るところです。まあ、化学処理云々については、どう受け止めるかだけだとは思いますけどね。

グルタミン酸ナトリウムと健康

1968年のアメリカでの出来事です。
中華料理店で食事をした直後、頭痛、歯痛、顔面の紅潮、体の痺れなどの症状を訴えた中華料理店症候群 (Chinese Restaurant Syndrome:通称CRS)が発生しました。しかし、「CRS」の自覚症状は一定しておらず、臨床的に「CRS」という症状は定義されておりません。

そして、この一連の症状の原因がグルタミン酸ナトリウムだと発表されました。これ以来、グルタミン酸ナトリウムの安全性については、論争が繰り返されています。

FAO/WHO合同食品添加物専門家会議などで繰り返し追試が行われましたが、通常の経口摂取ではヒトに対する毒性は確認されておりません。つまり、「CRS」を引き起こす根拠も見当たらないという結論が、一応、出ています。

が、先に述べた弘前大学の研究グループの件や「The Medlineplus Medical Encyclopedia」での発表のとおり、まったくの健康被害が無いとも言いきることができません。グルタミン酸ナトリウムに限らず、他のどんな調味料も取り過ぎれば、体に害があります。

その程度の話なのかもしれません。

 

L-グルタミン酸ナトリウムと高血圧の関係:結論

さて、話を滋賀県立短期大学の論文に戻したいと思います。

 

要約
市販の89種の加工食品中の総ナトリウム(Na)量,塩素(Cl)量及びグルタミン酸ナトリウム(MSG)量を測定し,由来別Naの分布状況をみた。
1)ほとんどの食品中にMSGが含まれていた。MSG由来のNa量が総Na量中に占める比率が10%以上の食品が89件中40件あり,食塩由来以外のNaについても考慮する必要がある。この傾向はとくに,漬け物,汁物,ふりかけ,魚肉練り製品,中華風惣菜に著しかった。
2)原子吸光法と,電極法またはモール法による測定値の差は,MSG量と高い相関性を示した。しかしながら,MSG量をこれらの差による計算で求めることは実用上困難であった。

 
要約1)を読む限り、高血圧に対する塩分摂取については、食塩そのものによるナトリウムの含有量というよりも、MSG由来のナトリウムを考慮に入れる必要がありそうに読み取れますね。

減塩志向が高まるのはいいことだと思いますが、塩分を気にするのではなくMSG由来のナトリウム含有量を気にすることのほうが、高血圧対策になるのではないかと思いたくもなります。

 
 
「うま味調味料」とか、「調味料(アミノ酸)」、「調味料(アミノ酸等)」などというある種の濁した表現。

うっかりと購入しがちなお菓子やインスタントラーメン、加工肉、みそ汁(インスタント)、カレールウなど多くの加工食品やスーパーの惣菜、ファミレスやファーストフードなどで食べ物。

結局、調理をするときに食塩を入れる量を気にするよりも、上記のようないわゆる加工食品を極力摂取しない、つまり、なるべく化学調味料を使用せず天然の昆布やかつお、にぼしなどからきちんと出汁をとった自炊をすることが、高血圧にもっともうれしい対応なのではないか、という結論に至りそうです。

グルタミン酸ナトリウムと摂取

塩1gで感じる塩味と、L-グルタミン酸ナトリウム3gで感じる塩味が、ほぼ同等とする話を耳にしました。(出典元は不明)

仮に、この話が本当だとした場合、L-グルタミン酸ナトリウムを使用することで、とんでもない量のナトリウムを摂取していることになります。

L-グルタミン酸ナトリウムを塩の代用品として使用しているご家庭では、減塩のつもりで使用しているそのL-グルタミン酸ナトリウムが、高血圧につながっている可能性が否定できないのではないでしょうか。

なぜなら、人は塩味で味の濃淡を決めていると言われています。

塩味が薄く感じれば、濃い味、つまり、より強い濃度の塩味を求めます。すると、L-グルタミン酸ナトリウムをより多く摂取することにつながる可能性が高くなると思いませんか?

 
 

今回を合わせて4回にわたって塩については話をしました。もう、塩というよりは、ナトリウムの話ですね。

L-グルタミン酸ナトリウム(MSG)については、現時点では、健康に悪影響があるという証拠はなく、また科学的根拠もありません。それゆえに、現在では使用は認められています。

食の安全は、数値により管理されています。すなわち、L-グルタミン酸ナトリウムは「安全」な食品であることには変わりありませんが、「安心」はできません。

 
高血圧対策の減塩のつもりでL-グルタミン酸ナトリウムがはいった調味料を使っていらっしゃるのであれば、極力その使用を控え、ちゃんとした天然塩を選んだうえで使用したほうが、高血圧にはうれしいかもしれませんね。

この4回の記事をまとめるために様々な文献を参照したうえで、本当に減塩をするのであればL-グルタミン酸ナトリウムより天然塩を選んだ方が私は良いと感じました。

 
 

市販されているだしの素や加工食品、惣菜やお弁当など、食品の裏に記載されている成分表示を必ず見ることでMSGの摂取を控えることは可能です。それが、高血圧に対してうれしい対応になる可能性が十分にありそうと読み取れる論文もあります。

調味料に限らず、「安全」と決めつけるのではなく、どのようなリスクが潜んでいるのかの正しい知識を、論拠ある文献から吸収して、あまり神経質になることもないと思いますが、塩分を気にしてます、くらいの感覚で食事を楽しんでいただければと思います。

私たち一般消費者がイメージする「食の安全」は、実は、心理的な判断による「食の安心」だったということがわかりました。

本章では、食の安全に関する基礎知識をまとめていきたいと思います。どうぞ、参考にしていただければと思います。

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