今回は、植物工場の事業参入にあたって確認しなければないこと、事業展開や展望についてまとめていきたと思います。

植物工場への事業参入するという覚悟

一般社団法人日本施設園芸協会の平成 28 年 3 月の報告書によると、収支状況は、全体では赤字が 42.1%、収支均衡が 32.9%、黒字が 25%という報告内容です。

そのため、他産業にくらべてまだまだ改善の余地がありますが、それゆえに事業継続の障壁も大きなものとなっているという前提があります。

障壁の大きさは先の報告書が示す通りの黒字経営となっている企業数のあまりの少なさが物語っています。

その赤字原因には色々と他サイトでも議論されていますが、大きく下記の3点に集約されます。

原因1:マーケティング、ブランディングの失敗

原因2:栽培方法が未確立

原因3:高コスト体質の運営

マーケティング、ブランディングの失敗

企業によって参入目的が異なりますが、赤字体質から抜け出せない理由として、そのマーケティング活動やブランディングの失敗が大きな理由として挙げられます。
作っただけで利益が出る植物や野菜などというものはありません。また果物との大きな違いとして、野菜は日常に食される食材という点があります。

たとえば、露地栽培の野菜などは、旬の季節になれば100円以下でスーパーの店頭に並びます。旬を過ぎ季節が逆になると、それこそ200円~300円程度するものまであります。

そのとき、一般家庭の主婦や独身家庭、一人暮らしの学生がそれらの野菜を選ぶでしょうか。

植物工場の最大のメリットは安定した収穫量です。しかし、野菜は安定した収穫量とはいえ高いお金を払ってまで日常に購入するものではないというのが消費者心理です。

また植物工場がもつその価値がブランディングとしてどこまで消費者に浸透したかについても疑問がぬぐえません。ブランドとして認知されていないものをブランドに育て上げるには、それなりの時間とコストが必要となります。

失敗原因の3つ目にもありますが、このコストによる原因は、ブランディングの失敗にもつながる要因となります。

栽培方法が未確立

前回までの3つの記事では、植物工場の環境管理に関する記事をまとめてきました。

植物工場にとってもっとも大事な照明装置の話

植物工場にとってもっとも大事な水(培養液)の話

植物工場にとってもっとも大事なカビを防ぐ話

これらの記事に共通して言えることとして、植物工場におけるランニングオペレーションはもちろんのこと、資材から環境設備、システム要件などの多岐にわたり未成熟な要素が多くを占めます。

露地栽培では、農家は自らの技術、勘と経験で柔軟に対応してきたところがあります。かなり属人的な生産体制です。ところが、植物工場では環境を完全に制御するため、光、温度、水、肥料、湿度など多くを機械設備のハード面の構築と、それらを運営するソフト面の両方を一度に管理しなければなりません。

2015年6月、国内最大規模の植物工場を運営する「(株)みらい」が民事再生法の適用を申請しました。負債総額は約11億円です。こちらの企業は千葉大大学院で栽培技術を研究したベンチャー経営者が2004年に創業したものです。2014年には千葉県と宮城県で2つの新工場が稼動しました。

それがなぜ倒産となったのか。

その原因は、植物工場の運営のノウハウにあるとされています。工場の立地や設備に関するハード面は十分にそろえられたが、それを運営するためのソフト面、つまり、栽培方法が確立されずに破たんしたものというものです。

高コスト体質の運営

以前の記事でも説明しましたが、植物工場の初期投資、いわゆるイニシャルコストと呼ばれる投資額は、300坪の工場でおよそ3億円と言われています。

国や自治体がバックアップしているため、補助金があるとはいえ、とても一個人が負担できる金額ではありません。

そこからさらに変動費となる電力、各種肥料や材料費、人件費、梱包費、管理費、また技術に関するメンテナンスや空調などの費用が発生するわけですから、その高コスト体質であることがお分かりいただけるかと思います。

 
 

如何でしょうか。

上記のような課題を解決する可能性は大いにあるのもまた、植物工場の展望としてあります。パナソニックはこうした一連の問題に鑑み、「政府の補助金なしでの黒字運営」を約束する自動栽培システムをワンストップで提供することを発表しました。

また、先ほどは破綻したと話をした「(株)みらい」は農業資材メーカーのマサル工業(株)(東京都豊島区)に事業譲渡され、2015年に「MIRAI(株)」として再スタートをしました。このように、植物工場にはバイオ企業、光化学機械メーカー、建設企業など、さまざまな企業がチャンスとして捉えていることは間違いがありません。

ユニクロもかつては農業に参入していたことを記憶されている方もいらっしゃると思います。ただ、ユニクロの場合は利益が出ずに2年後には撤退していますが。。。

野菜を大量に安定して供給することは、農家だけでなく、食糧確保の観点から国家規模で重要な事業となる可能性が十分にある産業です。

今後さらに注目を浴び、将来性のある分野であることが予想されるので、工場自体も今後全国で増えていくでしょう。

農業に興味のある方は、植物工場も視野に様々な方法を模索して事業参入していただければと思います。

本章では、植物工場の成り立ちから運営に必要な基礎知識や技術、活用する際の課題といった実用面までをまとめていきたいと思います。どうぞ、参考にしていただければと思います。

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